>& STDOUT

主にソフトウェアに関する日々の標準出力+標準エラー出力

JSTQB カンファレンス in 2010 に行ってきた

10/14(木) 東京ステーションコンファレンス サピアタワー5F にて開催された、JSTQB カンファレンス in 2010「ISTQB world trend reports」に行ってきました。


JSTQBは日本で受けられる数少ないソフトウェアテスト技術者の資格認定制度で、ベンダーフリーかつ国際資格であるISTQBとの互換性を有する唯一の資格です。現在日本では Foundation Level と Advanced Level (一部) が実施されており、私も先日 Advanced Level のトライアルを受験してきました。次の受験日が待ち遠しいです。


まだまだ日本では”ソフトウェアテスト技術者”という職種の確立がなされておらず、キャリアパスや必要とされるスキルセットが定義しきれていない印象があるなか、最低限の共通知識基盤の理解および判断能力を認証してくれるこの資格試験の意義は他のIT系職種の中でも割合高い位置にあるのではないかと私は思います。


そんなJSTQBの相互認証先であるISTQBに所属する世界のソフトウェアテストのスペシャリストが一堂に会し、世界のソフトウェアテストのトレンドを発表、議論するという趣旨の催しです。漏れます。しかも、「Foundation Level有資格者に限り、セッション参加1050円」というオニのようなディスカウント。ほっといても参加するようなチャネルに対するこの姿勢には侠気を感じさせますが、その内容も負けじと素晴らしいものでした。毎年やってくれないかなー。

参加したセッションレポート

Tutorial : Process, Project, and Product Metrics for Testing -テストのためのプロセス、プロジェクト、プロダクトメトリクス - Rex Black

テストマネジメントにメトリクスをどのように利用するか?テストプロセスからどうやって計測するか?進捗をどのようにはかるか?最終的な製品の品質をどのようにはかるか?をテーマに2時間強のチュートリアル。多くの時間がメトリクスの有効性や用い方、設計方法についての注意点などに割かれており、WACATEやSoftware Test PRESSでよくよくこの辺を諭されてきた面々にはちょっと冗長に感じられたかもです。私もその一人。テストの妥当な進捗度合いを測るDDPという指標はわかりやすくてよいなと感じた反面、新規開発では利用できないらしいのが残念(実際に質問しました)。ただし、ISTQBなどで定義されているテストのテクニック、プラクティスをちゃんと活用できれば、95%近い検出率を維持できるよ。と心強いコメントをいただきました。


はじめて生でみたRexは思いのほか偉丈夫で、ものすごい生真面目なジョークにとても好感が持てるナイスガイでした。というかいわゆる「アメリカのナイスガイ」ってこういう人の事を言うんだなあと実感。

Session 3. HAYST法を用いたソフトウェアテスト - 秋山 浩一

最近、「ソフトウェアテスト技法ドリル―テスト設計の考え方と実際」という、ブタ本バリ本に続く初学者向けの神本を執筆された秋山さんによるHAYST法の概要セッション。国際カンファレンスということで、日本発のソフトウェアテスト技術の紹介という趣旨でした。HAYST法は直交表を利用したテスト設計、実装技法として紹介、用語定義されることが多いのですが、FV表、ラルフチャートなど要求、設計のモデル化にも多くのプラクティスが取り入れられており、その守備範囲は単に設計技法に収まっていないように感じられます。HAYST法全体を一気に飲み込もうとするとかなり腰が引けますが、その中で解説されているプラクティスひとつひとつをまずは取り入れて、実践してみて、そこから前後にアプローチしていく方法でもよいのかなと、今回の講演を聴いて思いました。


印象的だったのは、「改善が一番効果があるのはテストレベル。計画にははいってるけど、実現できていない」との言。確かに、テストレベルという概念すら浸透していないのが現状と思えます。UT、IT、STというのはモラルや流行ではなく確固としたアクティビティであり、対応するプロセスの出来如何によってはその成果に大きな影響を及ぼす。ので、もう一緒にやっちゃった方が良くない?というのがWモデルの考え方かなと。

Session 4. Panel discussion 世界のソフトウェアテスト最前線 -Rex Black, Bernard Homes, Klaus Olsen, 大西 建児

おおとりは今回の催しの要旨とも言えるパネルディスカッション。パネリストもさることながらコーディネーターに石井さんと湯本さんという呆れるほど豪華な顔ぶれ。というか湯本さんはコーディネートどころか一緒に議論しちゃうんじゃないかと期待懸念されましたが徹底して抑えておられました。ちぇ。


ディスカッションのお題は、「これからのソフトウェアテスト技術者に必要とされるスキルとは何か?」。この時間でパソコンの電源が尽きてしまい、メモがとれなかったのですが、リスクベーステストをはじめとして、セミナーや勉強会への継続的な参加、TMMiの個人レベルでの活用、組織レベルでのテスト技法への動機付け、また、敢えて個別のテスト技法をチョイスしてきたと述べる大西さんはファズテスト、セキュリティテスト、機能安全に関するテスト、複合マシンインターフェーステストなどを挙げられていました。


個人的にキたのは、リスクベーステストとファズテスト、セキュリティテストと複合マシンインターフェーステスト。リスクベーステストはRexの主張する効率性とステークホルダーへの訴求性に強く頷けたから。でも何でもかんでもリスクベースでできる、というわけではなくコンテキストを把握しながら適用できる場面を選ぶ必要がある、という言も。ここはそうなのかー、というだけでまったくわかってないので要勉強。セキュリティテストはここしばらくの興味分野であり、ものすごいだっさい方法論を最近作ってみました。要改造。複合マシンインターフェーステスト(HMIではなく)はこれからのシステム開発におけるWEB世界へのシフトが加速するにつれ、HTTPをニューロンとしたマシン、システム間のインターフェースの複雑さが同時に増していく事が予想されるから。で、ファズテストですよ!!やっと大御所が言及してくれた感じ。自動生成したランダムなデータをテストアイテムにひたすら入力していき不具合をあぶり出す手法で、データの生成と対象システムの「期待されない振る舞い」をいかに捉えるか?を考えるのが難しく、楽しいテスト技法で、個人的にこういうシステムをテストするシステムを作るのが好きなので、数年前から自社に紹介して推進してきた経緯もあって、とても嬉しかったです。


ディスカッションで印象に残っているのは大西さんからの「リスクベーステストで低リスクと識別された機能については足切りすべきか?」に対してRexの「ジェームズ・バックのいうリスクベーステストを学んだ人なら足切りするだろう。私の考えは違う。というか火星と木星ぐらい違う」との言。でも、実際にコストや納期の制約があったときどうするんだろう、という素朴な疑問への言及はこの場では無かったです。最後に、「世界でも日本のソフトウェアテスト技術はかなり進んでいる。その中でJSTQBという資格を得て日々学ばれているみなさんは世界でもトップクラスに位置しているのでこのまま突き進んでリードしていってほしい」との言にはとても勇気づけられました。品質の国日本がテストで後塵を拝する理由がないと日々根拠無く思ってましたが、その想いに太鼓判を頂いた感があります。

祭りの後

全体を通して、いま学んでいる技術の根幹の部分の重要性を再認識させられたり、勇気づけられたり、新しい技術に取り組んでみようと思わせてくれる素晴らしいカンファレンスでした。壇上ではなく、つねに一般の参加者の方を向いて議論、講演されている様子は「教える」ではなく「みんなで一緒に学んでいこうぜ」という隠れたメッセージだったのかもです。運営の皆様におかれましては本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。


若者組は終電間際まで、オペレータ派遣して第三者検証って何だそれ!?つか第三者検証ってなんだよ!?や、それは流行言葉でIV&Vだって。独立性の概念ほったらかして何がIV&Vだ。つーかV&Vってなんだよ!プロセスをみるんじゃなくてプロセスの成果物だろ?ちげーよプロセス自体もVerificationの対象だろ。あ、みんなValidationは一致してるのね?いいのね?ホントだな?みたいなのをべろんべろんに酔っぱらいながら激論してました*1。日本のソフトウェアテストの未来は明るいです。

*1:こういうの面白そう!と感じてくれた方へ。[http://wacate.jp/2010/winter/gaiyo.html:title=そゆ仲間が見つかるイベント]が年末にありますよん